ペンネーム「あじぶか」さんからのお便り
専務さんに相談にゃ
静岡でラーメン屋をしているにゃ
4年目に入った新人にゃ
売上は少しずつ伸びているのにそれに比例するように子どもの小学校入学や酒税の増額や物価の上昇でちっともお金がたまらないにゃ
どうすればもっと気楽に水辺のブッダが買えるようになるかの相談にゃ
このまま消費税10%になったらますます貧乏ににゃるにゃ
お客さんを増やす方法かお金の貯まるコツを教えて欲しいにゃ
がっかりさせてわるいけど、私は専務さんじゃなくて、ばあちゃんだよ。
猫ってのは気ままなもんでね、ご指名を受けたからって、尻尾を振って悩みを聞くようなのは、そうめったにいるもんじゃないんだよ。猫に好いてもらえるかどうかは、出会いの一瞬の印象がすべてなのさ。ラーメンもそうだろう。最初の一杯がうまけりゃ、客は続けて来る。そうじゃなけりゃ、別の店に流れる。まあ、そういうもんだね。
どれ、あんたの肉球を見せてごらん。
ああ、わるくないね。店が4年もってるってことは、それなりに固定客もついて愛されてるんだよ。まず、それを認めなきゃ。もちろん、子どもはどんどんお金がかかるようになるし、消費税で苦しむのはみんな一緒だよ。だから、それは黙って受け止めるのさ。
ひとつだけ、あんたの欠点があるとすれば、不安や焦りが顔に出ることだねえ。客は店主の顔色や言動っていうのを、敏感に受け取るもんだよ。ラーメンがうまくたって、しけた顔した店主がいりゃあ、足繁く通おうとは思わないものさ。
だからね。どんなときでもにこにこ笑っているんだよ。あんたが作れる限りのうまいラーメンを出してさ。あんたが作れる限りの笑顔でお客に接するんだよ。それで、あんたが作れる限りの景気のいいことを言うんだよ。「お客さん、今日はいい日だね。幸せな一日になりそうだね。前から思ってたけど、お客さんはいい顔しているよ」
そうすりゃ、自然と行列ができるお店になるよ。あんたのラーメンを食べに全国から人が集まってくる。そんときは、私に桜えびでもわけてくれよ。